組み込みシステム開発におすすめのプログラミング言語5つ

どの言語を学べばいい?

プログラミング言語には、向き不向きがあります。 どのような目的で利用するかによって、学ぶべき言語は異なります。

組み込みシステム開発の技術者を目指したり、家電などに自分でシステムを組み込んでみたい場合には、どの言語を学べばよいのでしょうか?このページでは、 組み込みシステム開発におすすめのプログラミング言語を5つ紹介します。

組み込みシステムとは?

組み込みシステムとは、 家電製品や電子機器などを制御するプログラムのことです。洗濯機・エアコンなどの家電製品や、自動車にもコンピュータが使われています。そのコンピュータを制御する専用のプログラムが組み込みシステムです。

組み込みシステム開発におすすめのプログラミング言語5つ

組み込みシステム開発におすすめのプログラミング言語を5つ紹介します。それぞれの言語が、どのような特徴を持っていて、なぜ組み込みシステム開発に向くのか、習得の難易度はどれくらいか、などについて、初心者にも分かりやすく解説します。

1. C言語

組み込みシステムの開発で、最もよく使用されているのはC言語(しーげんご)です。C言語は、1972年に登場した長い歴史を持つプログラミング言語ですが、現代でもよく利用されています。組み込みシステム開発の技術者を目指すなら、C言語は必須と言えるかもしれません。

C言語は、非常に高速に動作する言語です。そのため、実行速度が重視される組み込みシステムに適しています。C言語で書かれたコードは、プログラミングした通りにそのままコンパイルされます。裏側で余分なコードが自動追加されず、コンパイル後の実行コードもコンパクトなままです。バックグラウンドで余分な処理が走らないため、C言語の実行速度は非常に高速になります。

組み込みシステムでは、ハードウェアの性能に合わせて最適なプログラムを作成する必要があります。家電などは十分なメモリを積んでいるとは限らず、メモリ消費を節約したり、メモリの性能を最大限に活用するプログラミングが求められます。このような目的には、プログラマ側でメモリ管理まで指定できて、プログラマの意図した通りにコードを実行させられるC言語が適しているのです。

家電などに搭載されている組み込みOSは、Linuxが主流です。そのLinux自体がC言語で設計されているため、組み込みシステムもまたC言語で開発するほうが、さまざまな面で開発効率が良くなります。

2. C++

C++(シープラスプラス)は、 “C言語の拡張版 ” として1983年に発表されたプログラミング言語です。汎用性が高く動作が高速なC言語の長所は残しつつ、オブジェクト指向プログラミングの概念が採り入れられています。

C言語は優れたプログラミング言語ですが、大規模開発の場面では効率が悪くなってしまう側面もありました。C++に採り入れられたオブジェクト指向プログラミングには、長期間かつ多人数の関わる大規模開発に向くメリットがあります。

C++は、C言語にオブジェクト指向の概念が採り入れられた“C言語の拡張版 ”です。 C言語と互換性があり、 C言語で作成されたソースコードを再利用できます。ちなみに、オブジェクト指向型言語の代表的な存在であるJavaは、C言語と互換性がありません。

3. Java

Javaは、携帯電話や情報家電などの組み込みシステムに採用される機会が増えています。Javaは、C言語やC++に比べればメモリ使用量が多くて動作も遅いため、スペックの低いハードウェアに搭載する組み込みシステムには使いづらい側面はあります。一方で、近年の携帯電話や情報家電では、そうした差を無視できるくらいにメモリ搭載量やCPU性能が向上しており、Javaで開発された組み込みシステムでも十分高速に動かせる状況になっています。

Javaで書かれたシステムには、OSに依存しないで実行させられるメリットがあります。Java仮想マシンによってWindows、macOS、Android、iOS、LinuxなどのOSに合ったマシン語に変換されてから実行する仕組みとなっているため、プログラマは動作環境の違いを意識せずに開発に集中できます。また、メモリの確保と開放が自動的に行われるため、プログラマにとって扱いがラクであり、システムの安全性も高められます。

JavaはJava仮想マシンを介するため速度が遅くなるのですが、その反面、様々な状況にも柔軟に対応できるメリットが得られます。例えば、最近の携帯電話や情報家電では後からアプリが追加されることがありますが、基本となるシステムと後から追加されたアプリが使うメモリ空間を切り離して、セキュリティを確保しながら動作させることが可能となります。

今後、家電や自動車などがコンピュータ化して、それらに搭載されているメモリやCPUの性能は向上していくことが予想されます。組み込みシステムの分野においてJava技術者が求められる機会は、まだまだ多くありそうです。

4. アセンブラ

アセンブラは、人間が見て理解しやすい高級言語と、コンピュータにしか分からないようなマシン語の中間に位置しています。 どちらかと言えばマシン語に近く、コンピュータの動作をハードウェアに近い言葉で生々しく指定する低級言語です。

アセンブラは、C言語よりもハードウェアに近い言語であり、より直接的なメモリ管理が可能です。コンピュータが演算する際のメモリの使い方などをそのまま記述できるため、プログラマの意図通りの無駄のないプログラミングが可能です。ハードウェア環境に合わせた最適なシステムを職人的に追及するなら、アセンブラの知識が必要となるかもしれません。

細かい動作まですべてプログラマが指定しなくてはならないため、プログラミングに手間は掛かりますが、プログラマのセンス次第でメモリやCPUの性能を極限まで引き出すことも可能です。

5. Python

家電などに自分でシステムを組み込んでみたい場合には、Pythonから入ると良いかもしれません。Pythonは、ウェブ開発、機械学習、データサイエンスなど、様々な分野で利用されていますが、組み込みシステム開発用の言語としても利用できます。

家電などに自分でシステムを組み込むためのコンピュータとしては、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)というパーツが格安で販売されています。

Raspberry Pi 4 Model B (4GB) element14 made in UK 技適取得済

Raspberry Pi は、ARMプロセッサが搭載されたシングルボードコンピュータで、Pythonで書いた組み込みシステムを搭載できます。つまり、素人でも家電に人工知能を組み込んで、ロボット家電をカスタマイズすることなどが可能ということです。

Pythonは、初心者にも学習しやすい言語です。他の言語ではコードが複雑になりがちな機能も、豊富なライブラリを活用して短く簡潔に書けるのが魅力です。C言語のようには高速ではなくても、Pythonの書きやすさやメンテナンスのしやすさ、ライブラリの豊富さは強力な武器となるでしょう。

まとめ

組み込みシステムに最も利用されているのは、C言語やC++です。組み込みシステム開発の分野に進むなら、C言語を身につけるのがおすすめです。

携帯電話などの組み込みシステムでは、Javaが多く採用されています。携帯電話やIT家電の組み込みシステム開発に関心があるなら、Javaを学ぶのがおすすめです。

極限までハードウェアに最適化したシステムは、低級言語のアセンブラで開発されることもあります。組み込みシステムを専門にするなら、アセンブラを学ぶことでコンピュータそのものへの理解が深まるでしょう。

また、家電などに自分でシステムを組み込んでみたい場合には、Pythonから入ると良いかもしれません。Pythonの書きやすさやメンテナンスのしやすさ、ライブラリの豊富さは強力な武器となるでしょう。